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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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三つめの宝物 -1-

三つめの宝物 -1- (鏡夜)

当ブログの特徴でもある「シリアス系」は一休みして、
今回は「まったり、ほのぼの系」を目指して、連載スタート!!
 


* * *

もう、一年も前のことになる。

横断歩道の渡り際、
ぎりぎり変わった赤信号を無視して突っ込んできた車と接触し、
数ヶ月もの入院生活を余儀なくされた鏡夜だったが、
11月に入ってようやく退院することができ、
本格的に仕事に復帰してから、丁度一週間が経とうとしていた。

事故の直後は、両目を怪我していたこともあって、
殆ど、まともに仕事もできなかった。

手術が無事成功し、両目の包帯がとれて、
ベッドの上で上半身を起こせるようになってからも、
病院にパソコンを持ち込んだり、時には橘や会社の部下を呼んだりして、
ある程度の仕事はこなしていたものの、
長時間、仕事をすることは、医者から固く止められていたため、
鏡夜はかなりもどかしい思いをしていた。

ようやく退院して取引先を回りだしたところ、
会う相手、会う相手、皆、口を揃えて鏡夜の怪我の様子を聞いてくる。

自分が身動きが取れない間のことで、不確かなところも多いが、
橘の報告によれば、鏡夜の事故のことは、
社交界でも、トップクラスに大きな話題になっていたらしい。
須王に続いて鳳までも、と、不吉な風聞まで立ったとのことだ。

身体を気遣ってくれるのはありがたいが、
骨折で固まった筋肉が、完全には元に戻っておらず、
そこそこ痛む足を、なるべく引きずらないように気を使って歩きながら、
表向きに平静を保って、取引先と顔を合わせ商談を進めるのは、
なかなか骨が折れる作業だ。

「鏡夜様、お体のほうはいかがですか?」

本日、三社目の打ち合わせを終えて、
後部座席のシートにぐったりもたれていた鏡夜を、
橘が運転席から後ろを振りかえって、心配そうに見つめている。

「ん……まあ、流石に少し……堪えるな」

体調が万全なら、どれほど忙しくても乗り切れる自信はあったが、
流石に、足の怪我も完治していない状況では、
身体に感じる疲れも普段の倍以上で、
鏡夜は珍しく、橘に向かって弱音を吐いてしまっていた。

「退院したら、もう少し効率よく仕事を回せるかと思ったんだがな」
「あまりご無理なさらないほうがよろしいのでは?」

もっとも、鏡夜がこんなことを素直に言える相手は、
ハルヒか橘しかいないわけだが。

「ほんとうに、時間はいくらあっても足りないものだな。
 次の予定はなんだったか……」
「予定は出来るだけ隙間無く、という鏡夜様のご希望がございましたから、
 この後は二社の商談と、一時間挟んで、
 夜には新作発表会への出席の予定も入れてありますが……」
「ああ、そうだったな」

社会人としての能力は、
三ヶ月現場から離れると急速に低下する、というが、
数日先の予定ならともかく、
今日一日の予定を聞き返さなければ分からないほどに、
疲労困憊な自分が、なんとも腹立たしい。

「鏡夜様。今夜の新作発表会の主催ブランドは、
 そもそも、鏡夜様が現在担当されている、
 鳳グループのリゾート関連事業から見れば、
 それほど重要な取引先ではないのではありませんか?
 いっそのこと、発表会への出席は取りやめて、
 本日はお早めにお部屋に戻られて、
 お休みになられたほうがよろしいと思います。
 本日の新作発表会は立食のパーティー形式で行われると聞いておりますから、
 お体にも障りますし」
「立食形式か……確かに、今は避けたいところだな」
「そうでございますよ。
 しかも、明日は鏡夜様のお誕生日ではありませんか」

橘が言うように、明日は鏡夜の誕生日。
しかも、『彼女』と初めて一緒に過ごす特別な日だ。

鏡夜の入院中、毎日のように見舞いに来てくれていた、
彼女への礼を兼ねて、
鏡夜としては外で豪華に食事でも、とプランを考えていたのだが、
ハルヒは鏡夜の体のことを気遣って、
(……いや……単に出不精なだけかもしれないが)
とにかく、ハルヒは鏡夜のために、
家で手料理を作りたい、と言うので、
明日の夜は彼女の家に行くことになっている。

大切なその日の前日に、
無駄に体力だけを消耗する気乗りのしないパーティーに、
参加するのは確かに避けたい。

しかも、鏡夜の事故のことは知っているはずなのに、
よりにもよって立食のパーティーに呼びつけるという、
主催者も、いささか無遠慮だ。

もちろん、椅子などは用意されているのだろうが、
鏡夜よりも目上の人々もたくさん集まる社交場で、
壁際に一人座っているわけにもいかない。

「分かった。先方への連絡はまかせる。
 今日はこのあとの打ち合わせが終わったら、家に帰ることにするよ」
「はい、畏まりました」

後、二度の打ち合わせを終えれば休めると考えたら、
疲れた体にも不思議と力が戻ってくる。

走り始めた車の中で、
鏡夜が次の会議の資料に目を通そうとしたとき、
胸ポケットに入れた携帯電話が着信を知らせてぴかぴかと光る。

反射的に引っ張りだして、
液晶画面に表示された名前に驚いて、
慌てて鏡夜は姿勢を正すと、通話ボタンを押した。

『はぁ~い。鏡夜君。あ、た、し、よ~。お元気?』
「……ら、蘭花さん?」

* * *

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