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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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共に在る理由 -41-

共に在る理由 -41- (ハルヒ&鏡夜)

彼女はやっと答えを見つけた。彼と『共に在る理由』を。

* * *
 

今、私は選ぶ

これから先、一緒に生きていきたいと思うのは
鏡夜先輩、あなただけだと

やっと見つけた
私があなたと共に在る理由

だから、鏡夜先輩


私を、あなたの『恋人』にしてください



* * *

鏡夜の両目の視力は、直接眼球にライトを当てて、やっと、
その明暗が判る程度にまで落ちてしまっていた。

ハルヒが心配する最悪の事態は、
その視力がそのまま戻らず、一生失われてしまうことだった。

しかし、その後の検査で、
再度手術によって回復の可能性があると、
医師から診断結果を聞かされたハルヒは、
まだ治ったわけでもないのに、
嬉しさのあまり、病室でわんわんと泣きだしてしまった。

「お前は最近少し泣きすぎだぞ」
「だって、嬉しくて……」

目の手術は、ある程度身体が回復するのを待ってから行われるということで、
一ヶ月ほどは今の状態が続くということだった。

どんな最悪の事態になっても、彼の痛みを分けてもらい、
支えていく覚悟を決めていたけれど、
彼の目が再び見えるようになる希望があるということは、やはり嬉しい。

「全く、仕方の無い奴だな。
 お前を泣かせると、俺が蘭花さんに叱られるというのに」

* * *
 

『恋人』というのは
お互いに同じだけ愛し合う

そんな人達のことを言うんだと自分は思います


* * *

鏡夜の事故の知らせを受けて、
ホスト部のメンバー達も続々と見舞いに訪れていた。

最初に訪れたのは光と馨。

事故の翌日には、二人揃って病室に現れて、
病室に入った直後こそ、鏡夜の怪我の様子に神妙な面持ちだった双子も、
その内、鏡夜が目も見えず、ベッドから動けないことを良いことに、
ハルヒが止めるのもお構い無しに、
お約束とばかりに彼の足のギブスに落書きをし始めた。

「俺としては、ハルヒ画伯の絵を披露して欲しかったけど。なあ、馨?」
「そうだね。光。僕らにあの天才的な芸術性を真似するのは無理だよね」
「……どうせ自分は絵心がありませんよ」

ふざけはじめた双子に対して、
どうすることもできない鏡夜の口からは、
ただ溜息が漏れるばかり。

「まあまあ、鏡夜先輩。たまには、いじられる側の立場でもいいんじゃないの?」

こんな機会は滅多にない、と、
光はギブスの上を縦横無尽に、きゅっきゅっとマジックを走らせる。

「そうそう。からかわれて困る鏡夜先輩ってのも、僕はかわいいと思うし」

追い討ちをかける馨の言葉に、
鏡夜は悪態をつくことしかできなかった。

「お前らな……」

* * *
 

あなたの傍にいることが、私が今一番したいこと
誰かの傍にいたいと強く願う意味

その答えを、ようやく見つけることができました


* * *

事故から数日後に訪れたのは光邦と崇。

光邦は本当なら、十月末まで
帰国の予定がなかったとのことだが、
事故の知らせを受けて、急遽、日本に戻ってきた。

ある意味では、彼の仕事の「成果」でもある、
大量のケーキとスイーツを手土産に。

「ハニー先輩、一つお聞きしますが」
「なあに? 鏡ちゃん」

折角の土産ではあったが、
鏡夜はまだ普通に食事をすることができず……、
いや、出来たとして、そのケーキを食べることができたかどうかは別問題だが、
光邦は、鏡夜のために持ってきたはずの、
ケーキや洋菓子の包みを開けると、一人でぱくぱくと食べ始めた。

傍で見守るハルヒも言葉を失う食欲だ。

俺の見舞いにきたのか、それとも口実に甘いものを食べにきたのか。
 
一体、どちらなんですか?」
「えへへ~。それはもちろん、両方だよ~?
 僕は鏡ちゃんもケーキも大好きだもん!
「……ハニー先輩、それはこの状況での答えとしていかがなものでしょうか……」

光邦と一緒に来たはずの崇の姿は病室には無い。

何故かというと、鏡夜を元気づけたいという彼なりの気遣いで、
ペットを一緒に連れてきてしまったために、
当然、病室はおろか病院に入ることができず、
外で光邦の見舞いが終わるのを待つことになってしまったからだ。

ハルヒが病室の窓から外を見下ろすと、
タヌキのぽめちゃんを肩に乗せて、ベンチに座っている崇の姿が見える。

「モリ先輩!」

ハルヒが窓を開けて呼びかけると、
崇はハルヒを見上げて穏やかに笑った。

「それにしても崇は、ちょっとお間抜けさんだったよね」
「ハニー先輩、気付いてたのなら、
 来る前に言ってあげたら良かったじゃないですか」

窓の下の崇に向かって手を振っていたハルヒがそう突っ込むと、
光邦はまったく悪びれない様子で、天使の笑顔を浮かべる。

「だって、僕、ケーキのことで忙しかったからねえ~」

* * *
 

たとえ上手く言葉に出せなくても
誰かの傍にいるということは、それだけで

と呼べるものなのかもしれません


* * *

ホスト部のメンバーだけでなく、
鏡夜の家族も当然病室に訪れていて、
ハルヒと出会うことも少なくなかった。

その中でも、もっともハルヒが緊張した相手は、
他ならぬ、鏡夜の父との遭遇である。

「おや、君は確か……」

手術の直後は一日中付き添っていたハルヒも、
その後は仕事を一旦切り上げ、夕方に病室にきて、
面会時間ぎりぎりまで病室に滞在して、
また事務所に戻るということが日課になっていた。

その日もいつものように見舞いに来て、
鏡夜と話をしているところに、
鏡夜の父、鳳敬雄が病室にやってきたのだ。

「君は、確か、桜蘭の特待生だったお嬢さんだね」
「は、はい! 藤岡です。すみません、お邪魔しています」
「……」

鏡夜よりも更に鋭利で、なにもかもを見透かすような視線が、
ハルヒをしばらく値踏みしていたようだが、
しばらくして、敬雄はふっと不敵な笑みを浮かべた。

「なるほど。お前が見合いを断り続ける理由は、
 このお嬢さんのせいか? 鏡夜」

「お父さん……それは……」

父親の前の鏡夜は、かなり慎重に考えてから発言しているようで、
口数が心なしか少なく感じる。

「まあ、私はお前に対して、仕事以外のことに口を出すつもりはない」

何を言われるかと、ハルヒは身構えていたのだが、
敬雄は、それ以上、二人の関係を細かく追求してはこなかった。

「お父さん、申し訳ありません。大事な時期に、こんなことになってしまって」
「いや、上出来だよ。お前の部下は皆よくやっている。オープンに支障はないだろう」

鏡夜の父が言うように、鏡夜が手がけていた仕事、
特に大型リゾート施設の新規オープン事業については、
鏡夜の作り上げたプロジェクトチームが、上手く機能しているようだった。

事故以来、毎日足を運んでいるハルヒが、
彼の側近ともいえる橘と病室で出会わないのも、
鏡夜の抜けた穴を埋めるべく、各方面を奔走しているからだろう。

両目の手術は来週ということだ。今は、ゆっくり休むといい」

* * *
 

いつもは受け止める側だったあなたの体温を
初めて自分から求めた

唇の先から伝わってくるあなたの熱は
あなたと私が同じ場所にいるという証


* * *

ハルヒと同じように、毎日病室を訪れている鏡夜の姉、芙裕美は、
久々にたっぷりと弟との会話を楽しんでいるようだった。

鏡夜は表向き、迷惑そうなクールな態度をとっていたけれど、
父、敬雄の前とは違う声の柔らかさに、
姉との会話を内心嬉しく思っていることは分かる。

「でも、本当に良かったわ。お二人が仲直りなさって」
「芙裕美さんには色々とご心配をおかけしました」
「……姉さん、そういえば、ハルヒをグルメマップとやらに、
 付き合わせていたようですが……。
 忙しい仕事なんですから、下らないことに引き回すのは止めてください」

咎める鏡夜の言葉をあしらうのも、芙裕美は手馴れた様子だ。

「あら、鏡夜さんは、私がハルヒさんと、
 鏡夜さんの知らない所で会っていたことに嫉妬してるのかしら?」
「芙、芙裕美さん……」

芙裕美が持ってきた花束を水差しに活けていたハルヒは、
その花瓶を落としそうになってしまった。

「ともかく、姉さん……これからはもう少し遠慮してください」
「はいはい。お二人のお邪魔はしませんわよ」

* * *
 

キスの後、しばらく、あなたは何も言いませんでしたね
私はあなたの言葉を待ちました


とても長い間、あなたが私の心を待ってくれていたように



* * *

一方、事故に居合わせた蘭花も、
鏡夜の怪我がかなり心配の様子で、
平日はバーへの出勤前に、頻繁に病室に来ているようだった。

もちろんハルヒも、毎日、見舞いに来ていたけれど、
丁度、父とは時間的に入れ違いになってしまっていて、
ハルヒが蘭花と病室で一緒になるのは、
互いの仕事の休みが重なる土日と決まっていた。

「じゃあ、手術は週明けに?」
「ええ、明後日の月曜日に決まりました」
「鏡夜君、緊張してる?」
「まあ多少は……ですが、ハルヒが付き添ってくれるというので、大丈夫ですよ
「えっ? ハルヒ、あんた月曜日って仕事じゃないの?」
「いつもはそうだけど、でも、休みを取ったから」

ハルヒは蘭花が持参したリンゴの皮を、
果物ナイフで器用に剥きながら、あっさりと回答する。

「なによう。言ってくれればお父さんだってお休みもらったのに」
「午後一時からの予定だから、出勤前に来ればいいじゃない」
「あんたね。そんな早くから出歩いたら、夜中まで体力が持たないのよっ!」

まだ周囲を見ることができない鏡夜が食べやすいように、
ハルヒは一口大にリンゴを切って、
楊枝に指したそれを、彼の口元に運んでやる。

「まあでも、ちょっと寂しいというか悔しいわね。
 手塩にかけて育てた娘が、いくら鏡夜君とはいえ、
 他の人のものになるってのはねえ」

鏡夜のために持ってきたはずなのに、
どさくさに紛れて、蘭花も剥かれたリンゴに手を延ばし、
しゃくしゃくと食べ始めている。

「でも、鏡夜君。判ってるとおもうけど、
 これ以上、ハルヒを泣かせたりしたら、
 本当の本当に、今度こそ承知しないわよ?」
「それならご心配なく。二度と手を離すつもりはありませんから」

ハルヒの目の前で、にこやかに火花を散らしあう二人に、
大事に思われていることは嬉しく思うものの、
あまりにストレートな態度だったから、
話題の中心であるハルヒは、恥ずかしくなってきてしまった。

「ちょっと、お父さん! 鏡夜先輩! 
 本人の前で、そういう恥ずかしい話題を堂々としないでください!

* * *
 

あなたは私に言ってくれました

「恋人にしろなんて、その必要はないだろう?」

同じ想いを共有したとき
あなたが言い続けてきてくれた言葉がやっと
本当の意味で私に届きました


「俺の恋人はお前だけだ。今までも、これからも」


* * *

個人的なものだけではなく、家同士の関係などもあり、
交友関係が極端に広い所為もあって、
鏡夜のもとには見舞いがひっきりなしに訪れていた。

身内だけならともかく、様々な方面からの格式ばった見舞いに対応するのは、
それなりに労力が要ることだと思われたが、
彼に言わせれば「いつもの業務に比べれば格段に楽」なのだそうで。

応対をするだけではなく、
ハルヒが来ることが多い夕方以降の時間帯に訪れる見舞い相手に関しては、
やんわりと、身体の状態を理由として、
次からは昼間の早い時間に来てほしいと、申し向けるくらいの余裕も見せていた。


こうして、順調に身体の傷も回復する中、
いよいよ鏡夜の目の手術の日が迫ってきていた。


* * *

続(エピローグへ)

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