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『桜蘭高校ホスト部』が大好きな管理人の、二次創作サイトです。

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シャロンといっしょ ~シャロンルート22日:その3~

DK二次創作小説
シャロンといっしょ ~シャロンルート22日:その3~
 
『デザートキングダム』シャロンルート22日目のシャロン視点短編の第三話です。
一ヶ月以上、間が開いてしまいましたね……。ということで、久しぶりの更新です。

※小説の文章は管理人のオリジナルですが、登場人物の台詞には、
※ゲームの文言をそのまま『引用』している部分があります。

 

* * *

魔神として生まれたにも関わらず、
魔力を失って、神の国EVUUからキングダムにやってきた彼女が、
私の周りにいた理由。

それは。

真の魔神とやらになり、故郷へ帰るため、
私の傍にいて、私の『本当の願い』を知る必要があったから。

彼女の存在を、いつのまにか特別視して、
これから先もできる限り、私の傍で笑っていてほしいと、
そんな人間臭い、けれどささやかな願望を抱いていたのは私だけ。

私はずっと一人だった。
それに不満を想うことも、それ以上を願うこともなかった。

けれど、初めて……、
彼女とならこの先もずっと、一緒にいてもいいのではないかと思った。

けれど、彼女にとっての私の存在意義は、
私とは全く正反対のもの。


彼女は私と……いや、この国と『別れる』ために、
一時、傍にいてくれただけなのだ。



人ならざる彼女が、
私の願いが本当か嘘か見抜けるというのなら、
只の人の身である私に、それを否定する術はない。
 
彼女と初めてパレスで会ったときから、
いや、本当の初対面はスークの雑貨屋の前だっただろうか?
それから、一カ月にも満たないほどの短い付き合いしかないが、
私に対する彼女の言動から、
彼女の性格は十分理解しているつもりだ。
 
「言ったでしょ。言えないことは言えないって言うし、
 アンタに嘘をつく必要もないって」

私はずっと、周りの人間を誰一人信じることなく執政を行ってきた。
それは、私が他人の嘘に敏感であり、かつ、
私の前で嘘をつかない相手や、
堂々と渡り合う人間に、ほとんど出会ったことがなかったからだ。

けれど、彼女は初めて会った時から今まで、
決して私に嘘はつかなかった。

私には話相手の嘘を見抜くことができると、聞いた上でもなお、
彼女は臆することなく向き合ってくれた、初めての相手だった。
だからこそ、彼女の言葉は、
この虚飾に満ちた世界の中で唯一信用できる。

いつだったか、私が正直にそう伝えたら、
彼女はそういう私の態度が嬉しいのだと言って、笑ってくれた。
 
「私の言葉を世迷言って切り捨てずに、
 私に向き合ってるのは、アンタ自身の意志でしょ?
 あんたが私を信用に足ると判断してくれてるなら、私は嬉しい」

私の一族について、どれほど黒い噂が陰で立とうとも、
表立って私を批判するような勇気のある者は、ほとんど皆無だった。
強いてあげるなら、私に剣を向けた将軍くらいのものか。

将軍は、王国の治安維持にあたる部隊『ナイツ』を私兵化し、
手に入れた地位と権力で、長年甘い汁を吸って来た憎むべき政敵。

だが、自分の心に正直だという意味においては、
彼の態度は評価に値するのかもしれない。

だが、どれほど私が誠実に政務を遂行しようと、
行政をすみずみまで改革し、内政を立て直しても、
王家不在が長引けば長引くほど、
蔭で、私や父に対する非難は、日に日に強まっていった。

宰相一家は、キングダムの『簒奪者』だ、と。

そんな私に彼女はこう言ってくれたのだ。

「シャロンは悪いヤツじゃないと思う。うん」
 
国中の誰からも、後ろ指を指されている私を、
たった数日しか経ってない、こちらのことなど何も知らない癖に、
それでも彼女は「信用できる」と言ってくれたのだ。


……心から。


「だって、他人の嘘に敏感な人間が、他の人に対して嘘をつくとは思えないし、
 アンタが私に誠実なら、私が同じように誠実に返事をして
 何の問題があるの?」

その彼女の言葉が……その他大勢の、
私に取り入ろうとする者達がするような、
「おべっか」などではなく真実であることが分かったから、
私も彼女の誠意には、可能な限り答えたいと思った。

 「私を善人だなどと勘違いされては困るが……、
 そうだな、君のその言葉は、嬉しかった。
 君の前では、せいぜいその信頼に足るようにふるまうとしよう」
 
積極的に『虚偽』を並べるのではなく、
真実を意図的に『隠す』こともまた『嘘』だというのなら、
私にだって、嘘をつくことくらいはある。

しかし、私は、彼女の前では、
積極的な嘘だけは、少なくともつくまいと決意したのだ。

だから、この日も、私は自分の願いがもう少しで叶うと、
思っていたからそう口にしたのであって、
私には彼女に嘘を付いた気など毛頭なかった。

それでも、神たる彼女が、
私の言葉、私の願いが嘘なのだというならば、
私にはそれを否定する材料がない。

何故なら。

今までずっと無私を貫いてきた私には、
自分にすり寄って来る他人の心の中は見抜くことはしても。


自分の心の中を探ろうとしたことは、今まで一度もなかったからだ。

 
「つまり君は『私が君に偽りを口にした』と、そう言っているんだな」
 
きっと、彼女は、私に裏切られたと思っているのだろう。
 
「……否定しないの? 嘘じゃない、本心だって弁解しないわけ!?」
「しても仕方なかろう。君の中ではもう結論が出ている。
 それを今ここで、私が否定したところで意味が無い」

今まで出会ってきた誰よりも純粋で、誰よりも真っすぐで、
言いたいことを言い、笑いたいときには笑い、怒りたいときには怒り、
自由奔放に何にも染まることのない君が、その存在全てで導き出した答え。

 「君には君の出した結論を信じる権利がある」

それが、『私の願いに嘘がある』との結論ならば、
私はその意思を甘んじて受け入れるべきなのだろう。


彼女が言うところの、『私の本当の願い』が何なのか、
その答えに、皆目見当がつかなくとも。


だが、どうもこの時の私の態度が、
彼女の機嫌を痛く損ねてしまったらしい。


「馬鹿シャロン! 何が権利だ! 私はそんな答えが欲しいんじゃない!」


彼女の判断を尊重するつもりで発した言葉に対して、
まさか、そんな風に癇癪を起されるとは思ってもなかったので、
怒って政務室を飛び出して行った彼女の後姿を見送って、
……どうも、私はしばらく呆けていたようだ。
 
ふと気付いてあたりを見回したら、
私に用事があると言って、政務室に来ていたはずの、
王立研究所の館長の姿がどこにも無かった。


一体どれほどの時間、私は我を失っていたのだろう?


* * *

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